今日は、僕が以前都市ガス会社で働いていた時に取得した「甲種ガス主任技術者」という資格について、試験の概要や勉強法をご紹介します。
なお、ガス主任技術者試験には、甲種・乙種・丙種がありますが、難易度の違いはありますが勉強方法さほど変わりませんので、乙種や丙種の試験をご検討の方もご参考いただけるかと思います。
記事の信憑性を担保するために合格証を載せておきます。
ちなみに、私は6年半務めた都市ガスの会社を退職し、現在はITエンジニアとして仕事をしております。
ガス主任技術者試験って何?
ガス主任技術者とは
詳細は機器検査協会に記載がありますが、ガス主任技術者を取得し、免状を得ることで可能になるのは、「ガス工作物の工事、維持及び運用」です。
試験の難易度は、高い順に甲種>乙種>丙種となっており、「ガス工作物の工事、維持及び運用」の中でも、難易度ごとに扱える範囲が異なります。
つまり、資格取得することによよって、可能となる独占業務は「ガス工作物の工事、維持及び運用」のみです。
しかし合格のメリットはそれだけではありません。
ガス業界にいる方が取得すれば、昇進・昇級等に直結する社内での評価アップを狙える資格でもあります。さらに、ガスの小売り自由化に伴うガス需要の拡大により、有資格者へのニーズさらに高まると予想されます。
気になる合格率は?
甲種・乙種・丙種ともに、例年の合格率は10〜20%となっています。
甲種はそこそこ難しい部類の試験になるのではないでしょうか。
合格基準
合格基準は以下①〜⑤すべてを満たす事です。
①マークシート問題及び論述問題の合計得点(300点満点)が180点以上であること。
②マークシート問題の法令科目(80点満点)の得点が25点以上であること。
③マークシート問題の基礎科目(50点満点)の得点が15点以上であること。
④マークシート問題のガス技術科目(100点満点)の得点が30点以上であること。
⑤論述問題(70点満点)の得点が20点以上であること。出典:日本ガス機器検査協会
絶対評価(合計点が180点以上)で合否が決まるので、問題の難易度によっては合格率が変化します。
※補足
マークシートの問題は1問5点で53問中46問を解答します。
論述は法令1問とガス技術を3問の中から1問の合計2問を解答し、1問35点です。
どうやって勉強するの?〜ガス主任技術者勉強法概論〜
ガス主任技術者が難関と言われる所以はズバリ、毎年新しい問題が出る点だと思います。
つまりいくら過去問を完璧に覚えても、試験においては過去に出題例がない問が多数出題されるため、満点及び高得点を取る事が難しいのです。
しかし恐るるに足りません。
というのも合格基準は6割だからです。6割というのは半分より少し多いくらいのイメージです。
そこで、重要なのが頻出事項のみを効率的に抑えることです。
僕のオススメの勉強方法が「過去問を中心とした基本事項」を叩き込む正統派のやり方です。
そのため、勉強法の解説では、どの分野・問題が頻出事項なのかを記します。
試験範囲は広いため、全ての範囲の過去問題を満遍なくやるのは効率がめちゃくちゃ悪いです。
ちなみに、テキストは参考程度に読むくらいで十分です。
過去に出題例が無い、試験における重要度が低い事項を覚える必要は全くありません。
この方法を実践すれば、多少の問題の難易度に左右される事無く、合格点である6割を取る事が出来ます。
以下に科目毎の勉強方法を詳しく紹介します。
午前問題(マークシート)対策
午前問題(マークシート)対策概論
午前問題の目標得点は、230点中135点です。
過去問との類題が頻出の「基礎理論」と「法令」対策に注力しましょう。
「ガス技術」は100点と配点が大きいですが、過去問との類題が出題されづらく、費やした時間に対して得点が伸びづらいです。
基礎理論(目標得点50点中35点以上)
ガス事業に関する理論分野であり、文章題と計算問題が半分ずつ位の割合で出題されます。
この「基礎理論」はガス主任技術者試験において最も容易に解ける科目なので満点を狙う必要があります。
容易である理由は2点ほどあります。
まず、1点目に問題の解答方法に秘密があります。
それは基礎理論だけ、「5つの選択肢の中から適当な選択肢(または不適な選択肢)を1つ選べば良い」からです。
他のマークシートの科目に関しては「5つの選択肢の中から適当なものの個数を選ぶ」ため、5つ全ての選択肢について理解できていないと正解できないため、難易度が高くなります。
次に、基礎理論は、過去問の類似問題が頻出されます。
すなわち、過去問対策をすることで効率的に実力をアップさせることができるのです。
後述しますが、過去問の類似問題が出ない分野もあるので、要注意です。
そのため、過去問をベースに、文章題に関しては全ての選択肢を理論含みで覚え、計算問題では全ての解法をマスターしましょう。
法令(目標得点80点中50点以上)
ガス事業法(と特定ガス消費機器に関する監督に関する法律)に関して出題されます。
この分野も満点を狙う必要があります。
理由は、8割以上が過去問と同じ問題が出題されるため、対策がしやすいからです。
とは言えかなり細かい引っかけが多いので、引っ掛けどころを全て覚えられるレベルまで過去問をマスターしましょう。
解法のコツは、選択肢を文節毎に区切って正誤判定を行うことです。
引っかけを見逃す確立が減少し、正答率が上がります。
ガス技術(目標得点100点中50点)
まず、科目選びですが「製造」「供給」「消費機器」の内で、最も点数を稼げるのが「製造」で、次いで「供給」、「消費機器」です。
ご自分の携わる業務を参考に解きやすい科目や分野を見つけ出し、学習してください。
過去問の対策をすると知識が付きますが、類題が出題されづらく、得点に結びつきづらいです。
どんなに勉強しても、確実に高得点を狙う事が厳しい科目なので、あまり時間を割く必要はないと思います。
ただ、30点未満だと足切りになるため、このラインは最低限超えましょう。
午後問題(論述)対策
午後問題(論述)では「法令」と「ガス技術」が出題されます。
ここでも、午前試験と同様に、過去問題との類題が頻出の「法令」に注力することが必要です。
ただ、「ガス技術」についても対策がしやすいため、「法令」と同様に頻出パターンを抑え、知識を正しい文章としてインプットし、ストックしておくことが肝要です。
法令対策・論述(目標得点35点中30点)
確実に満点が狙える科目です。
過去問を見ればわかりますが、以下の4種類くらいの内容を完璧にしておけば十分です。
どのような問題に対しても、組み合わせて答えられるので、最もコストパフォーマンスの良い科目と言えます。
- ガス主任技術者制度
- ガス事業法における保安管理体制
- 保安規定
- 消費機器の使用に伴う事故防止
過去問をベースに、シンプルな表現に直したり、より加点されそうな事項を追加して、解答用紙に収まるくらいの文字数(800−1000字)の自分専用の解答を作りましょう。
インプットは書くより何度も口に出す方がオススメです。
なぜなら1000語を書くとなると30分もかかりますが、口に出すなら3分しかかから無いため、効率が圧倒的に違います。
ガス技術対策・論述(目標得点35点中20点)
法令までは行きませんが、過去の出題例からパターン化が出来ます。
- 製造:地震対策、ガスの品質管理、保全方式
- 供給:地震対策、経年管対策、工事事故防止策
- 消費機器:事故防止
等が出やすい分野としてあげられます。
これらすべての科目を入念に勉強していけば、まるっきり同じ問題が出たら完答できますし、新出の問題に対しても、知っている事項の組み合わせで若干対応可能です。
効率的に学習するために行った3つの事
e-ラーニングを活用する
キバンインターナショナルというe-ラーニングを専門に取り扱う会社が実施しているものを活用しました。
基礎理論について、独学では理解が難しい部分を中心に役立ちました。
基礎理論対策で大学受験の参考書を買う(物理と化学)
僕は高校時代、生粋の文系でして物理や化学の知識はほとんどありませんでした。
なので、「基礎理論」の超基礎的なことを理解するため、大学受験用の参考書を購入しました。
試験まで時間がある方は、オススメです。
【化学】
2014年のガス主任受験当時は、『岡野の化学をはじめからていねいに―大学受験化学 (理論化学編) (東進ブックス―気鋭の講師)』という書籍を読んでいましたが、廃版になったようです。上記の書籍は、内容が似ているためおすすめです。目次は下記の通りです。
第1講 原子の構造・周期表
第2講 元素の性質・化学結合
第3講 結晶の種類・分子の極性
第4講 化学量・化学反応式
第5講 溶液(1)・固体の溶解度
第6講 酸と塩基
第7講 酸化還元
第8講 電池・電気分解
第9講 熱化学
第10講 気体
第11講 蒸気圧・気体の溶解度
第12講 溶液(2)・コロイド出典:技術評論社HP
「第4講 化学量・化学反応式」、「第9講 熱化学」、「第10講 気体」が参考になります。
【物理】
2014年のガス主任受験当時は、『橋元の物理をはじめからていねいに―大学受験物理 (熱・波動・電磁気編) (東進ブックス―名人の授業)』という書籍を読んでいましたが、廃版になったようです。上記の書籍は、内容が似ているためおすすめです。目次は下記の通りです。
第1講 理想気体の状態方程式と内部エネルギー
第2講 熱力学第1法則と気体の状態変化
第3講 定積モル比熱と定圧モル比熱
第4講 熱効率と熱力学第2法則
第5講 正弦波
第6講 ドップラー効果
第7講 光波
第8講 20世紀の物理学革命
第9講 光電効果
第10講 水素原子の構造
第11講 原子核と核反応
第12講 放射性崩壊と半減期
出典:東進Web書店HP
第1講〜4講の熱力学分野が参考になりまります。
模試を受ける
i-netschoolという会社が実施している、「ガス主任模擬試験(論述)」を受講しました。
論述については明確な採点箇所がわかりませんでしたが、この模試を受ける事で採点箇所や、端的な解答を知る事ができました。
答案は試験当日まで読み込み、そらんじて言えるレベルまで覚えました。
まとめ
甲種ガス主任技術者は、合格率は低いものの、合格点は6割です。
僕は上記の勉強法を実践し、おおよそ300点中230点でした。
(マークシート230点中165点、論述70点中65点)
ポイントは、過去問題との類題が出題される分野を絞って勉強し、得点力を効率的に上げることです。
マークシートなら「基礎理論」と「法令」、論述なら「法令」と言った具合です。
試験分野全体を完璧に仕上げる必要はないので、意外と合格はしやすいかと思います。
それでは本試験、頑張ってください。